冬でもキレイな手元で
全国的に梅雨入りして、雨が多くなるこの季節。つい身近で入手できるビニール傘や味気ない傘のまま雨の日を過ごしてしまいがちですが、今年は大切に使いたいと思える傘を1本、手に入れてみませんか?
昭和23年の創業以来、生地からこだわりぬいた傘を作り続けている「前原光榮商店」の雨の日にポジティブな気分にさせてくれる愛すべき高級傘をご紹介します。
美しさと機能性を兼ね備えた傘とは?
昭和天皇、今上天皇をはじめ、皇室の方々の傘を作成している前原光榮商店。「傘という漢字のなかにある人の文字は『生地、傘骨、手元、加工の4つのパーツをうけもつ匠たち』を指す」という理念のもと、一生ものの傘を作り続けています。
大量生産では8枚、10枚と重ねて裁断される生地も、前原光榮商店では精度をあげるために2枚重ねで丁寧に裁断されます。裁断道具も職人が調整した型と断ち包丁を使うというこだわり。この作業での出来が、商品の善し悪しを大きく左右するのです。
また、前原光榮商店のデザインは流行を追いかけて変化するようなことはありません。職人たちが手がける傘は、基本的にモデルチェンジを行わないのです。普遍的なデザインだからこそ、時間が経つことで味わいが深まり進化するという楽しみを秘めています。
特に、変化を楽しめる部位は、傘のハンドル部分「手元」。寒竹、楓、ヒッコリーなどの個性豊かな天然素材の多くは、使い込むほどに味わいを増していきます。同じ素材を使用していても個体差があり、それぞれ違う表情を持っているのも特徴です。
一本一本縦糸を手作業でセットし、伝統的な機(はた)で丹念に織られます。
まっすぐに仕上げた中棒に「はじき」を手作業で埋め込み、骨を組んでいきます。
この道50年の加工職人により、生地が骨組みに張られていきます。
いろいろな木にあわせた方法で「曲げ」を行い、主に天然の染料を塗ってツヤと深みを出します。
ライフパートナーとして傘と付き合う?
一度購入してから、10年20年と使うためには、的確にメンテナンスをうけるための環境が必要です。メンテナンスに関する知識、職人とのパイプライン、修理の流れに添うインフラ……それらすべてを持っているお店で購入してこそ、ライフパートナーとなりうる「一生ものの傘」に出会えます。
前原光榮商店では頻繁なモデルチェンジを行わないため、様々な部品が長期間保存されています。職人たちも「自分の傘」という意識があり、親身になって面倒をみてくれるので、部品さえあれば20年経っても修理を受けることができるのです。
また、長く使い続けるためには、使い手の心遣いも必要です。日頃のメンテナンスで気をつけたいポイントをまとめました。
雨水を切る際に傘を強く振らない
使用後はタオルで雨水を軽く叩くように拭き取り、日陰干しにして湿気を十分に取り除く
雨傘を長期間保管する場合は、屋内の太陽光や蛍光灯などの光があたらない場所、かつ乾燥した場所に保管する
改めて知る。高級傘を持つに相応しいマナーとは?
街中で傘がぶつかったり、水滴が飛んできたり……雨だけでも憂鬱なのに、さらに不快な思いをすることはありませんか。素敵な傘に相応しいマナーを確認しましょう。
傘は斜め下に向けてから開きましょう。閉じるときは、上で一度すぼめてから下に降ろして完全に閉めます。上や横に向けると顔の高さになり、周囲の人を傷つけてしまうことがあるので危険です。
水滴を落とすときは、傘を閉じてから骨の先端を握り、傘の先を下に向けて軽く数回降るようにしましょう。
傘をさすときはハンドルの湾曲した方を自分に向け、身体の中心でまっすぐ持つことで、後ろの人の視界も確保できます。閉じて歩くときは、傘先が人に向かないように気をつけて。人とすれ違うときには、さっと反対側へ持ち替えるとよいでしょう。
また、電車内では必ずベルトで留めて。周りの人が濡れないよう気をつけましょう。
「傘かしげ」とは、道で相手にぶつからないよう反対側に傘を傾けるしぐさのこと。相手を尊重し、思いやる心から生まれた傘かしげは、江戸仕草のひとつなのです。粋なしぐさで、雨の日もさわやかな気持ちで過ごしましょう。
前原光榮商店オススメの傘
ベーシックで変わらないフォルムを持ちつつも、生地の織りや手元などのバリエーションが豊かな前原光榮商店の傘。ライフパートナーとしてともに過ごせる1本が見つかるかも。