冬でもキレイな手元で
2013年6月、世界遺産に登録されたことによりこれまで以上に高まっている富士登山の人気。
十分な準備をして、しかるべき手順とルールを守れば、登山初心者の方でも安心して登頂することができます。
今回は、登山ガイドの渡邉幸子さんをお迎えして、エキスパートが語る富士山の魅力や登山の心得などをお伺いしました。[前編]
プロが語る富士山の魅力
初登頂で富士山のパワーに魅了されました
私の富士初登山は、以前、自然学校のスタッフだった頃、職場の仲間たちと日帰りで登ったときなんですが、そのときに、富士山のパワーのようなものを肌で感じ、その後ガイドをするようになりました。ガイドの役目の一環として富士山の歴史を紐解いていくと、日本人の心の根底にある“自然を尊ぶ気持ち”に触れることができ、富士山の偉大さを日々体感し、日本人と富士山の関係を知れば知るほど、奥深い山だと思い、どんどん魅了されていきましたね。
人との出会い、御来光以外の絶景も富士山の魅力
現在はガイドとして富士山に登ることがほとんどですが、毎回参加される方が違うので、どんな方が来られるか楽しみですし、富士山が新しい出会いの機会を与えてくれるんだと、感謝の気持ちもありますね。
山頂では、富士山だけでしか見られない景色が何よりのご褒美。御来光の素晴らしさは言うまでもなく、太陽の周りに虹色に輝く光輪や、彩雲という虹色に見える雲など、その雄大かつ繊細な美しさに見入ってしまいます。また、夕方近く、夕日と反対方向の地平線から七色の放射状に輝く後光が出る「裏後光」があるのですが、シーズンに一度か二度しか見ることができないので、ガイドの私たちでさえ見たときは思わず拝んでしまうほど。
こんなふうに、貴重な景色に出会えることも富士山の大きな魅力でしょうね。
登った人だけが味わえる“富士登頂”の達成感
富士山にはもう100回くらい登っていますが、どれ一つ同じ景色はありません。日本一高い場所へ登ったその瞬間、“自分自身の富士山の景色”として他では得られない思い出となる素晴らしさが、そこにあるからだと思います。
また、下山は修行そのものですが、下山して登ってきた富士山を振り返った時に、「富士山に登ったんだ!」という達成感を感じ、感慨深い気持ちに…。
世界遺産に登録され一層注目が高まっていますが、富士山という存在が日本の文化、歴史の中で大きな存在であり、日本だけではなく世界中の芸術家にもその影響を与えている。わたしたちが思う以上に、富士山という山は世界でも認められる大変魅力的な山なのだと実感しています。
その富士山を登りきった時、「日本一の山の頂上まで登れた」という事実は、今までに味わったことのない達成感と、「頑張った自分」への充足感を与えてくれるはず。この経験が、これからのみなさんの心の中の宝物になり、今後もいろんなことを頑張れるという自信に繋がるのではないでしょうか。